【10月30日(日) ヴァンラーレ八戸戦】
マッチデープログラム
染矢 一樹選手インタビュー
(全編)
“染矢一樹が怪我からの復帰までの5か月間を本音で振り返る”
今シーズンは、4月10日に行われた第5節・ギラヴァンツ北九州戦で左ハムストリングの肉離れが長引き、長期離脱を強いられてきた染矢一樹。
いつ、どんな時も全力を貫く背番号11がピッチに帰ってきたのは、約5か月後の9月17日の第25節・カターレ富山戦。
サッカー人生で初めて味わうことになった長期離脱をどのような気持ちで乗り越え、そして復帰を果たしたのか。
本音を語ってもらった。
Q:これだけ長期間ピッチを離れたのはサッカー人生で初めてとお話しされていました。
その間は、どのようなお気持ちでしたか?
染矢:怪我して良かったと思うことは何一つとなかったですね。
怪我することで”得るものがある”と言う人もいますが、自分には最後まで分かりませんでした(笑)。
ただスタンドの上から観ていても、サッカーしたいという情熱を失わずにいられたので、そこは良かったと思っています。
本当に悔しくて、もどかしい日々を送ってきました。
その中でずっと自分に言い聞かせていました。自分よりももっと大きな怪我や病気でサッカーができない選手もたくさんいると思うので、そういう選手に比べたら全然マシだと。
むしろ自分のプレースタイルや年齢を考えれば、ここまで長期の怪我なくやれていたことが奇跡だと思うので、だからこそ『仕方ないよな』という気持ちもありました。
Q:長期間のリハビリは言葉にできない辛さもあったと思いますが、どのようなモチベーションで乗り越えてきましたか?
染矢:杉本大雅や前川智敬とは長く一緒にリハビリをしていましたが、あいつらに自分がリハビリを腐らずにやるところを見せて、走りのメニューでも『俺がやるんだからお前らもついてこいよ』というスタンスでやっていましたね。
自分がしっかりとやることで周りがついてきてくれると思っていますし、自分と同じように苦しい思いをしている選手もいたので、その選手たちに背中を見せる、腐らずにやることの大切さを見せようと。
自分の体のことはもちろんでしたけど、若手のことも考えながら一日、一日を腐らずに、同じように復帰したいと思っている仲間たちと切磋琢磨してきたのは(リハビリ自体は)楽しくはなかったけど、(切磋琢磨できたことは)楽しかったです。
Q:ようやく第25節・富山戦で復帰できました。
久しぶりにピッチに立って感じたことはありましたか?
染矢:もちろん自分は、年齢というのはただの数字だと思っていて、衰えも感じていませんが、側から見れば、この年齢の選手が、あのプレースタイルでこれだけ長期の怪我をしてしまえば、『復帰してやれるのか?』という疑問を抱いた方もいたと思うんです。
富山戦で復帰しましたけど、正直再発するリスクもありましたし、復帰できても自分がこの怪我をしたことで、全然ダメだなとか、感覚がおかしいぞと思ってしまえば、ぶっちゃけサッカー人生を考えなければいけないと思っていました。
ハムストリングの怪我はスプリンターにとって宿命みたいなもので、今回の怪我はかなり苦しんだので、自分のキャリアを懸けた一戦でした。
体のキレはまだまだでしたけど、自分の良さも出せるし、まだまだ相手の脅威になれることを実感できて『まだやれるな』と感じることができたので、この試合で得られたものは相当大きかったし、自信にも繋がりました。
5カ月間も休んで、練習に戻ったのも試合の週だったので、スタメンと聞いた時は驚いて、コーチ陣にも何度も『本当にスタメンなの?』と聞きました。
でもそのように自分のことを期待してくれていることがすごく嬉しくて、起用してくれる監督やスタッフ陣の期待にも応えたいという思いも大きかったです。
正直、あの一戦の前は、夜も寝づらいくらい考えることがたくさんありました。
でも久々にそういうプレッシャーと戦って勝てた気はしますし、その後も藤枝や松本といった上位との試合に出場を重ねてきて、やっぱりやれるなと思ったので、今シーズンだけじゃなく、まだまだやれるということを自覚できたし、お客さんにもそういう姿を見せられたという気持ちになれましたね。
Q:ピッチ上で魅せている姿を見て改めて存在の大きさを痛感しますし、そういう声がチームメイトからも聞こえてきていました。
染矢:自分は、性格なのか、キャリアを重ねてきたからかわかりませんが、監督や首脳陣に評価されるよりも、下の選手に『あの人やっているな』とか、『この人についていきたいな』と思われたいんです。
そのような声の方が気になるんですよね(笑)。
そうやって言ってくれている選手が自分をまた必要としてくれる、まだできるなと思ってくれたなら、それが自分自身の成長にもつながりますし、素直に嬉しいなと思いますね。
Q:リハビリ中の姿勢はもちろん、ピッチ上でのどんな状況でも全力に心を揺さぶられます。
その原動力はどこにありますか?
染矢:昔は全然強い人間じゃなかったです。
中学でも高校でも当時の先生や監督、コーチたちには『お前は中身が弱いから絶対にやれない』と厳しく怒られてきました。
自分は思ったことをなんでも口に出してしまうタイプなので、練習メニューが嫌なら、『なんでこんな練習をやらなあかんねん』と言ってしまうタイプです。
そこは今でも変わっていないところもありますが・・・(笑)。
高校も大学も全くエリートではなかったので、雑草Jリーガーだと思っていますし、プライドみたいなものがないんですよね。
自分の実力を素直に受け入れられるというか、自分が下手だと思いながらずっとやってきました。
そんな自分に『何ができるか?』と言われれば、”走って戦うこと”、”仲間のミスをカバーすること”。
そういった人が嫌がる仕事をできるタイプだと思っています。
Q:プロに入った後もそういう心構えでいられることは純粋にすごいと感じます。
染矢:正直、プロ1年目は全然やれるなと思っていました。
ただ、当然プロに入ってからも壁にぶつかって、メンバー外の時もありました。
その時も腐らずに来るチャンスをずっと待っていましたし、必死で練習してきました。
その中でも先輩や監督の助言を素直に聞くことできたので、その力は大きかったと思います。
だからこそここまでキャリアを続けてこられたと思いますし、苦しい時、しんどい時にこそ自分の真骨頂が出せる気がします。
チームが苦しい時こそ、その人自身が出ると思っていますし、チームがしんどい時にこそ助けたい。
今までのサッカーキャリアの中で自分よりも上手い選手を何百人と見てきましたが、嫌なことを続けられることが自分の強みでした。
そこには根本的に負けず嫌いというのがありますけど、自分にとってはピッチで全力を出すことは当たり前なことだと思っています。
Q:プロに入ってから直面した壁というのはどんなものでしたか?
染矢:プロ1年目は、相手が自分のことを知らなかったので、足の速さだけでJ2でも十分に通用したんですよ。
ただプロ2年目になってからスカウティングもされはじめて、縦、縦だけでは無理だなと。
当時は試合に出たり、出られなかったりを繰り返して、食事も睡眠も意識が低かったです。
それを3年目以降に徐々に変え、結婚したというのも一つの転機になりましたが、この生活や練習態度のままでは消えるなと感じたので、その時に少しずつ食事や睡眠、練習に臨む態度を変えていきました。
そこで腐らなかったです。
そこは引退してから『よく頑張ったな』と自分を褒めたいところですね。
Q:まさにプロフェッショナルですね。
染矢:グラウンドで100%を出すためには、その時にグラウンドに来て『じゃあやるか』では無理なんですよ。
日頃の生活は、食事も含めて本当に嘘をつかないと思います。
そういう意味ではブレずにやり続けてきました。
何度も悔しさや苦しさを味わいながら、その度に辞めてやろうと思ったこともたくさんありました。
でも次の日になると『今日も走るか』という気持ちになります。
妻にはたくさんの愚痴をこぼしてきました。
メンバー外になった日の夜には、『なんで使われへんねん』という愚痴を言いながらも、妻は『朝になったら頑張る』のをわかってくれていたと思います。
次の日『あの監督、見返してくるわ』と言ってから練習場に向かったことが思い返すとたくさんありましたね(笑)。
Q:悔しい感情を前向きに変えていけるパワーが改めて凄いと感じました。
染矢:メンバー外の時に練習場で悔しくて泣いたこともあります。
試合に出ていても結局、何もできない試合もたくさんありました。
サッカー選手は人が思うよりも大変な仕事で幸せになる選手は本当に少ないと思います。
でも、勝利した時やゴールした時の嬉しさは、サッカー選手でなければ一生味わうことができないと思っています。
だからその貴重な経験を失いたくないと思いながらずっとやっています。
その為に食事も、睡眠も、練習前、練習後の準備も徹底するようにしています。
やっぱり後悔したくない気持ちが強いです。
今回の怪我も自分の中ではやれることを全てやっていたので、また怪我して復帰が遅くなってしまっても、ぶっちゃけ、もうやれることないなと思えるくらいやってきたので、仕方ないと思う気持ちもありましたね。
だからなのか、サッカーをやめることを楽しみにしている自分もいます。
好きなものを食べたいですし、パンやチョコレートも大好きでしたが、ここ何年も食べていないので味を忘れてしまったんですよ(笑)。
この間、誕生日(10月13日)の時に妻がケーキを用意してくれて、本当に小さく切ってもらって久しぶりに食べたら、すごく喉が痛くなってしまって・・・(笑)。
30代になってからは妻が作ってくれるご飯と和菓子しか基本的には食べていないので、体がおかしくなってしまっているんです。
引退してからは好きなことをして、好きな時間にお酒飲んでというのを楽しみにしています(笑)。
ただ今はそれよりもゴールや勝利の喜び、仲間と戦う喜びの方が勝っているので、それを失わないために一日、一日を大切にしてまだまだ頑張りたいと思っています。
0歳になってもサイドをドリブル突破してクロスを上げることが今の目標なので、美味しいものを食べるのは、まだもう少し後でいいという気持ちです。
Q:最後に今後への抱負を聞かせてください。
染矢:このクラブでこれだけ長くお世話になっていて、このチームと街が自分の一部みたいになっているので、大げさな言い方かもしれませんが、沼津の人たちに活力を与えたいですし、自分が走ること、闘う姿を見せることで少しでも沼津が活気付いてくれたらという気持ちです。
自分としてはただいるだけのベテランは嫌なんですよ。
クラブとしては下の年代が引っ張らないといけないのかもしれませんけど、それを嫌がっている自分もいます。
自分がまだまだ引っ張っていきたいし、まだ負けたくない。
若手たちと切磋琢磨してチームとしてもっと良くなっていく一部でありたいです。
ベテランと言われることはあまり好きではありませんが、まだまだ若々しく、チームの先頭に立って走って、仲間を鼓舞して、あいつらともっともっと上の景色を見られるようにしていきたいと思います。
interviewer:森亮太














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