【インタビュー企画】「サステナビリティに正解はない。だからこそ、謙虚に、共に学び、行動する。」

2026/08/29

第28回JFL(2026-27シーズン)開幕に向け、アスルクラロ沼津がどのような想い、考えで、日々動いているかを、サポーター・地域・パートナー企業の皆様に知っていただくことを目的として、フロントスタッフインタビュー企画を全6回でお届けします。

第2回は【サステナビリティ編】。アスルクラロ沼津のサステナビリティ戦略アドバイザーを務める栗栖貴紀さん。
普段はアメリカのプラスチック会社に勤務し、日本の事務所で自動車業界を中心とした仕事に携わる一方、アスルクラロ沼津のサステナビリティ活動にも関わっています。
なぜ、栗栖さんはサッカークラブのサステナビリティ活動に関わるのか。
そして、アスルクラロ沼津が地域に果たすべき役割とは何なのか。
「知識マウントを取らない」「サステナビリティという言葉が消える世界が理想」と語る栗栖さんに、活動への想い、2026-27シーズンに取り組みたいこと、そして5年後に目指すクラブの姿についてお話を伺いました。

 


【インタビュー】「サステナビリティに正解はない。だからこそ、謙虚に、共に学び、行動する。」
――サステナビリティ戦略アドバイザー 栗栖貴紀さんが語る、アスルクラロと地域の未来

「普遍的なテーマ」だからこそ、地域と向き合いたい

–まずは、栗栖さんの現在のお仕事と、アスルクラロ沼津での役割について教えてください。

栗栖:普段はアメリカのプラスチック会社に勤めていて、日本の事務所で主に自動車業界のお客様との仕事をしています。
アスルクラロ沼津では、サステナビリティ戦略アドバイザーとして、クラブのサステナビリティ活動について助言したり、一緒に考えたりしながら関わっています。

–サステナビリティ活動に関わる中で、どのようなところにやりがいを感じていますか?

栗栖:やはり、サステナビリティというテーマが「普遍的」であることだと思います。
特に沼津をはじめとするこの地域は、環境と防災が非常に密接につながっています。
以前、あるパートナー企業の方が「この地域は環境と防災が密接につながっている地域ですよね」とおっしゃっていて、本当にその通りだなと感じました。
そう考えると、この地域にはもともとサステナビリティに対する関心や意識が潜在的に高いのではないかと思っています。
だからこそ、私たちの活動に対して地域の皆さんから「共感」をいただけた瞬間には、大きなやりがいを感じます。

クラブだからこそ持っている「発信力」と「影響力」

–サッカークラブであるアスルクラロ沼津が、サステナビリティに取り組む社会的な役割について、どのように考えていますか?

栗栖:Jリーグ全体でも言われていることですが、サッカークラブそのものの活動が地球環境に与える負荷は、社会全体から見ればそれほど大きくありません。
一方で、クラブには大きな「発信力」や「影響力」があります。
選手たちが真摯にサステナビリティに取り組んでいる姿を見せることで、サポーターや子どもたちの意識や行動に、ポジティブな変化を生み出すことができる。
そこに、サッカークラブがサステナビリティに取り組む大きな意味があると思っています。

 

–活動を進めていく上で、大切にしている考え方はありますか?

栗栖:一言で言えば、「知識マウントを取らない」ということです。
サステナビリティについて勉強しているからといって、その知識を誰かに押し付けたり、「サステナビリティだからやらなければいけない」というスタンスで進めたりするのは違うと思っています。
日々の生活の中にある課題については、地域の皆さんも、すでに潜在的に気づいていることがたくさんあります。
だからこそ、私たち自身も「教えてもらう」「一緒に勉強する」という姿勢が大切なのではないでしょうか。

2026-27シーズン、取り組みたい3つのこと

–2026-27シーズン、特に力を入れていきたい取り組みについて教えてください。

栗栖:大きく3つあります。
1.「測定できる」活動にしていく
まずは、1年でのJリーグ復帰を見据え、Jリーグ全体でも取り組まれている「SPL(スポーツ・ポジティブ・リーグ)」を意識していきたいと考えています。
イベントや活動を「実施して終わり」にするのではなく、できるだけ測定可能、検証可能な形にしていきたい。
例えば、公共交通機関の利用促進を行ったのであれば、「実際にどれだけ利用されたのか」「それによってどれくらいCO₂排出量の削減につながったのか」といったところまで、可能な範囲で数字として見えるようにしていく。
そうすることで、活動の成果が見え、次の改善にもつながります。

2.この地域ならではのテーマに取り組む
2つ目は、地域特性に寄り添ったテーマ設定です。
先ほどお話ししたように、この地域では環境と防災が密接につながっています。
だからこそ、遠い世界の話ではなく、地域の皆さんの日常生活に身近なテーマを取り上げていきたい。
「自分にも関係がある」と感じてもらえることが、共感を広げていくためには重要だと思います。

3.活動そのものを「持続可能」にする
そして3つ目は、サステナビリティ活動自体の持続可能性です。
一時的なボランティア活動で終わらせるのではなく、パートナー企業との連携や収益化も含めて、クラブ経営に貢献できる仕組みにしていきたいと考えています。
サステナビリティを継続するためには、活動を支える経営基盤も必要です。

「新しいこと」よりも、今ある活動を一歩前へ

–新しくチャレンジしてみたいプロジェクトはありますか?

栗栖:もちろん新しいことも考えていきたいですが、リソースが無限にあるわけではありません。
だからこそ、今まで取り組んできた「ホームゲームでのアルミ缶回収」や「パーク&バスライド」といった活動を、まずは堅実に維持し、ブラッシュアップしていくことが大切だと思っています。
ここでいう「ブラッシュアップ」は、単に活動を続けるということではありません。
「やって終わり」ではなく、測定できる形にして、成果を見える化することです。
例えば、スタジアムへ来場するサポーターが公共バスをどの程度利用しているのかを把握し、それによってCO₂排出量をどれくらい削減できたのかを、簡易的な計算式でもいいので算出してみる。
そうした検証を重ねながらPDCAを回していく。
一つひとつの活動を丁寧に検証し、次の活動につなげていく姿勢が重要だと思っています。

クラブが「地域と行政、企業をつなぐ架け橋」に

–行政や自治体、パートナー企業と連携することで、どのような価値を生み出していきたいですか?

栗栖:行政との連携で考えているテーマの一つに、「ゴミの分別」があります。
実は、市町によってゴミの分別ルールは異なります。
それぞれの自治体で処理能力や設備などの事情が違うため、分別方法も違ってくるのだと思います。
そこで、「なぜ自分たちの地域では、この分け方をするのか」という理由まで理解することができれば、ゴミの分別に対する協力度も、もっと高まるのではないでしょうか。
例えば、アスルクラロのマスコット「アスルくん」がゴミ処理場を見学して、その様子を動画で紹介する。
そんなこともできると思います。
クラブの発信力を使って、行政が行っている取り組みや、その背景にある理由を分かりやすく地域の皆さんに伝える。
クラブが行政と地域住民をつなぐ「架け橋」のような役割を担えたら面白いですね。

 

–パートナー企業との連携についてはいかがでしょうか?

栗栖:まずは、私たちがそれぞれの企業について勉強することだと思います。
その企業がサステナビリティという文脈で何を目指しているのか、何を発信したいのか。
そこをしっかり理解した上で、アスルクラロが持っている発信力をどう組み合わせられるのかを考えていきたい。
お互いの強みを持ち寄ることで、企業にとってもクラブにとっても、そして地域にとっても価値のある取り組みにしていきたいですね。

5年後、「強くて、地域に愛されるクラブ」へ

–5年後、アスルクラロ沼津がどのようなクラブになっていてほしいですか?

栗栖:サステナビリティへの感度を高く持ちながら、地道に活動を続け、同時にチームの成績もしっかりと上げているクラブです。
一見すると、サステナビリティとサッカーの成績は直接関係がないように思えるかもしれません。
でも、やはり競技成績が伴っていなければ、人々から本当の意味での共感を得ることは難しいと思います。
「サステナビリティだけを頑張っているクラブ」ではなく、「サステナビリティにも真剣に取り組みながら、強いクラブ」であること。
その両輪を回していくことが大切です。
素晴らしい実力と実績を持っているからこそ、地域活動に熱心に取り組む姿がかっこよく見えるし、多くの人にとってのシンボルとして輝く。
アスルクラロも、「サステナビリティをしっかりやっている。そして強い」。
そんなクラブになってほしいですね。
そして、地域の人たちにとって「応援しがいのある存在」になってほしい。
「愛して、熱中できる地域の象徴」、いわゆるシビックプライドにつながるようなクラブになれたらと思っています。

 

サポーター、地域、パートナーの皆さんへ

–アスルクラロを支えてくださる皆さんへメッセージをお願いします。

サポーターの皆さんへ

「サステナビリティ」という横文字を使うと、少し難しく聞こえるかもしれませんが、決して難しいことではありません。
基本的には、「今あるこの素晴らしい環境を、これからもずっと素晴らしいまま残していこう。そのために、自分たちには何ができるだろう」と考えることだと思います。
難しく考えすぎず、日々の生活の中でできることから、気軽に参加していただけたら嬉しいです。

地域の皆さんへ

この地域は、本当に豊かな自然環境に恵まれています。
一方で、環境と防災が密接につながっている地域でもあります。
だからこそ、まずは自分たちの身近な環境に関心を持ってもらいたい。
そして、自分にできる小さな一歩から、一緒に始めていけたらと思っています。

パートナー企業・行政の皆さんへ

皆さんが目指しているサステナビリティの活動の中で、アスルクラロが持っている「発信力」をぜひ活用していただきたいです。
それぞれが持っている強みを組み合わせながら、より良い地域づくりを一緒に進めていければと思います。

「サステナビリティ」という言葉がなくなる世界へ

–最後に、栗栖さんが考える「サステナビリティ」とは何でしょうか?

栗栖:サステナビリティに決まった正解はないと思っています。
だからこそ、地域の皆さんが感じている身近な課題に寄り添い、私たち自身も常に謙虚な姿勢で学び続けたい。
そして、皆さんから教えてもらいたいですね。
そもそも、サステナビリティという言葉を使わなくても、みんなが自然に環境や地域のことを考え、行動している。
そんな世界になれば、それが一番理想なのかもしれません。
サステナビリティという言葉がなくても、当たり前のように未来のことを考えて行動する。
アスルクラロが、そんな地域をつくっていくための一つのきっかけになれたら嬉しいですね。

 

 

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