【インタビュー企画】「準備9割、本番1割。スタジアムは『我が家』でありたい」

2026/09/04

第28回JFL(2026-27シーズン)開幕に向け、アスルクラロ沼津がどのような想い、考えで、日々動いているかを、サポーター・地域・パートナー企業の皆様に知っていただくことを目的として、フロントスタッフインタビュー企画を全6回でお届けします。

第5回は【運営編】。
プロスポーツクラブにとって、ホームゲームはクラブの根幹ともいえる大切な場所です。
そのスタジアムで、試合を成立させ、お客様を迎え入れ、選手が最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整える。
その舞台裏には、多くのスタッフ、ボランティア、関係者の力があります。
今シーズン、アスルクラロ沼津の運営を担うのが的地亮さんです。
セルジオ越後さんの事務所での仕事を皮切りに、FC東京、フットサルFリーグのバルドラール浦安の立ち上げ、FIFAクラブワールドカップなど、さまざまな現場を経験してきました。
アスルクラロでは運営を中心に、広報や強化も経験。
現在は、再び運営担当としてホームゲームの最前線に立っています。
「準備が9割、本番は1割」
「トランシーバーから自分の名前が呼ばれないことが、良い運営の証」
「スタジアムは、お客様にとって『我が家』でありたい」
一見すると華やかな試合の裏側で、何を考え、何を準備しているのか。
そして、Jリーグ復帰に向けて、どんなスタジアムをつくろうとしているのか。
的地さんに、ホームゲーム運営へのこだわりと未来への想いを伺いました。



【インタビュー】「準備9割、本番1割。スタジアムは『我が家』でありたい」

――運営担当・的地亮さんが語る、ホームゲームの舞台裏とJリーグ復帰への決意

 


フットボールのさまざまな現場を経験し、アスルクラロの「ど真ん中」へ

 

――まずは、これまでのキャリアと現在の担当業務について教えてください。

的地:私のキャリアは、セルジオ越後さんの事務所で働いたことから始まりました。
その後、FC東京の運営に携わる機会をいただき、そこからフットサルFリーグのバルドラール浦安の立ち上げや、FIFAクラブワールドカップの運営など、さまざまな経験をしてきました。
その後、運営担当としてアスルクラロ沼津に来ました。
沼津では広報を担当したり、昨シーズンは強化にも携わりました。
今シーズンから再び運営担当に戻り、広報や強化とも連携しながら仕事をしています。


――運営担当の仕事とは、具体的にどのような仕事なのでしょうか?
的地:大きく分けると、「競技運営」と「会場運営」の2つがあります。
競技運営では、審判やマッチコミッショナーなど、試合に関わる方々とのコミュニケーション、キックオフまでのタイムコントロール、試合記録の管理などを行います。
チームが滞りなく試合に臨める環境を整えることが、競技運営の大きな役割です。
一方、会場運営では、お客様の受け入れ、関係者の手配、ホームゲーム全体の準備、集客、そしてJリーグとのさまざまな連携など、試合を開催するために必要なことを幅広く担当します。
アスルクラロのDNAには、「ホームゲームがクラブの根幹である」という考えがあります。
その「ど真ん中」に運営担当としていなければならない。
そこには大きな責任を感じますし、同時に、そこに関われることへの喜びも感じています。

 

「準備9割、本番1割」――見えないところで勝負は始まっている


――ホームゲームを開催するまでに、どのような準備をしているのでしょうか?

的地:スタジアム運営は、「準備が9割、本番1割」だと思っています。
試合当日に何かが起きたとき、初めて考えていては遅い。
だからこそ、事前の準備が非常に重要です。
クラブフロント内でのミーティングはもちろん、安心・安全な運営を行うために、警察、消防、病院のドクター、警備会社、メディア、協力企業など、非常に多くの関係者の皆さんと事前に打ち合わせを重ねています。
ホームゲームは、クラブだけでつくるものではありません。
たくさんの方々と情報を共有し、準備を積み重ねることで、初めて当日の運営が成立します。


――試合当日は、どのように動いているのでしょうか?
的地:本当にシンプルに言えば、「スタジアムの鍵を開けるところから始まり、鍵を閉めて帰るまで」です。
朝、スタジアムの鍵を開けて、当日の最終確認を行います。
そこから各セクションのタイムコントロールをしながら、キックオフに向けて準備を進めていきます。
試合中は、チームや競技運営がスムーズに進んでいるかを確認する。
試合が終われば、勝敗によって変わるスタジアムの状況を確認し、お客様が安全かつスムーズに退場できるよう誘導する。
最後は清掃、撤収、戸締まりまで行って、ようやく一日が終わります。
ホームゲームは、試合開始の笛が鳴ったときに始まるわけではありません。
そして、試合終了の笛が鳴ったときに終わるわけでもありません。

 

1試合を支えている、100人を超える仲間たち


――1試合のホームゲームには、どれくらいの人が関わっているのでしょうか?

的地:大まかに言うと、フロントスタッフが約10名、サポートスタッフ(ボランティア)が60~80名ほどで、合計すると試合により前後ありますが、100~150名ほどがスタジアムに関わっています。
フロントスタッフは、社長から役員まで含め、ほぼ全員がホームゲームの運営に携わります。
そのほかにも、警備会社の方々が平均40名ほど、一般のサポートスタッフが約25名、アカデミーの中学生がボールパーソンなどで20~30名。
さらに、アスルクラロのシニアチームである「アスルクラロシニア」の皆さんも毎回20名ほど参加してくれています。
静岡県サッカー協会の皆さんにも、5~6名体制でサポートしていただいています。
本当に、多くの人の力で一つのホームゲームができています。

 

「神様レベル」で感謝している、サポートスタッフ(ボランティア)の皆さん


――サポートスタッフの皆さんとの連携で、特に意識していることはありますか?

的地:本当に、サポートスタッフの皆さんには「神様レベル」で感謝しています。
運営という仕事は、体力的にも非常にタフです。
フル稼働の試合になると、サポートスタッフの皆さんも朝から晩まで8~9時間、一緒に汗を流してくれます。
それに対して、クラブからお渡しできるのはお弁当一つだったり、選手との交流イベントだったり、じゃんけん大会のサイン色紙だったり。
それだけのために、これほどの時間と熱量をかけてクラブを支えてくれる。
「サポートスタッフ」という言葉だけでは表現できない存在だと思っています。
だからこそ、単なる「お手伝い」ではなく、「自分のクラブ」「自分のチーム」の当事者であり、ファミリーだと思ってほしい。
そのために、公式ホームページで情報を公開する前に、
「実は次はこういうイベントがあります」
「ここだけの話ですが、こういう企画が進んでいます」
といった情報を事前に共有することもあります。
クラブを「自分ごと」として感じてもらえるような関係をつくっていきたいんです。

 

運営の究極は「トランシーバーから自分の名前が呼ばれないこと」


――運営担当として、やりがいを感じる瞬間はどんなときでしょうか?
的地:一番嬉しいのは、やはりお客様から「ありがとう」と言っていただけることです。
私たちはピッチで戦っているわけでもありませんし、直接何かを提供しているわけでもありません。
それでも、試合に勝ったあとに、お客様から「今日良かったよ!」と声をかけてもらったり、握手やハイタッチをして帰っていただけたりする。
そうやって、お客様の笑顔に直接触れられる仕事は、なかなかないと思います。
「ここで応援するのが楽しい」
「ここで勝てて嬉しい」
そう言ってもらえる瞬間も、本当に嬉しいですね。
そして、フロントと現場が一丸となって、一つの勝利に向かっていることを感じられたときにも、大きなやりがいを感じます。

――逆に、「今日は良い運営ができた」と思えるのは、どんなときでしょうか?
的地:究極を言えば、
「試合中、トランシーバーで一度も自分の名前を呼ばれず、何事もなくスムーズに終わること」です。
運営という仕事は、長くやればやるほど、「100%できて当たり前、120%やっても特別に褒められることはない」仕事だと感じます。
ある意味、自己満足の世界なのかもしれません。
でも、裏を返せば、トラブルがなく、スタジアムにいるすべての人がストレスなく過ごせたということこそ、最高の運営ができた証拠なんです。
その「自己満足」のクオリティを、どこまで突き詰められるか。
そこが運営担当としての勝負だと思っています。

 

最大の課題は「想定外」にどう対応するか

――これまでの運営で、特に苦労した経験はありますか?
的地:やはり、急激な気象変化や悪天候への対応です。
試合を開催するのか、一時中断するのか、それとも中止にするのか。
どのタイミングで判断し、どう関係各所やお客様に伝えるのか。
判断を待っていただくことで、周囲にストレスや不便を強いてしまうこともあります。
そうした状況での判断は、常に大きなプレッシャーがあります。
また、スタジアムへのアクセスについても課題があります。
駐車場の混雑やバスの運行など、クラブだけの力では簡単に改善できない部分もあります。
それでも、少しでも良くするために、関係者の皆さんと協力しながら取り組んでいます。

 

「試合」というメインディッシュを引き立てるスタジアムへ

――2026-27シーズン、新しく改善・強化したいことはありますか?

的地:大きく2つあります。
一つ目は、サポートスタッフの皆さん一人ひとりの負担を減らすことです。
業務をうまく分散することで、一人ひとりの負担を軽減し、新しく参加してくれる人も入りやすい体制をつくりたい。
結果として、クラブに関わってくれる人をもっと増やしていきたいと思っています。
二つ目は、スタジアムの案内看板や案内表示、いわゆるサインの改善です。
初めて来た方やご家族連れの方でも、入場してから帰るまで迷うことなく、ストレスフリーで過ごせる空間をつくりたい。
そして、近年増えている急激な天候変化にも対応できる、安心・安全なスタジアムづくりも引き続き進めていきます。

――スタジアムでの体験を、さらに魅力的にするために挑戦したいことはありますか?
的地:スタジアム全体の一体感を、もっと高めたいです。
コアなサポーターの皆さんが熱く応援してくれるのはもちろんですが、初めて観戦に来た方も、いつの間にかその空気に引き込まれて、スタジアム全体が一つになる。
そして、相手を圧倒する。
そんな空間をつくりたいですね。
私はホームゲームを「レストランのコース料理」に例えることがあります。
メインディッシュは、間違いなく「試合」です。
でも、メインディッシュがおいしいだけではなく、前菜や雰囲気まで素晴らしいレストランだからこそ、「また行きたい」と思ってもらえる。
スタジアムも同じだと思うんです。
イベント、キッチンカー、音楽、雰囲気。
そうした「前菜」の部分まで含めて、「スタジアムに行けば何か面白いことがある」「行ったら絶対楽しい」と思ってもらえる場所にしたい。
五感すべてで楽しんでもらえる、まるでお祭りのような空間です。
そして、帰り道にお客様が思わずアスルクラロのチャントを口ずさんでしまう。
そんなスタジアムが理想ですね。

 

「圧倒的なホーム感」をつくりたい

――的地さんが理想とするアスルクラロのホームスタジアムとは、どんな場所でしょうか?
的地:目指しているのは、「圧倒的なホーム感」です。
お客様にとって、スタジアムが単なる「遊びに行く場所」ではなく、2週間に1回、
「我が家に帰ってきた」
「またここに戻ってきた」
と感じられるような、温かい居場所にしたい。
一方で、選手たちにとっては、その温かい後押しによって120%、150%の力を発揮できる場所でありたい。
そして、アウェイチームにとっては、
「沼津のスタジアムには行きたくない」
「ここで戦うのは嫌だ」
と思われるような、強烈なホームの空気をつくりたい。
沼津らしいアットホームな優しさと、勝負の世界としての厳しさ。
その両方を兼ね備えたスタジアムをつくりたいと思っています。
それが、Jリーグ復帰への道を切り拓く力になると信じています。

 

アスルクラロが「生活の一部」になる未来へ


――さらにその先、どんなクラブになってほしいですか?
的地:究極の目標は、沼津市民や静岡県東部の皆さんの「生活スケジュール」の中に、アスルクラロ沼津のホームゲームもアウェイゲームも、当たり前のように組み込まれていることです。
「今週はアスルの試合がある」
それが特別な予定ではなく、当たり前の日常になっている。
それが実現できたとき、クラブとしての「真の成功」と言えるのではないでしょうか。

 

スタジアムを支えるすべての人へ

――最後に、サポートスタッフ、そしてファン・サポーターの皆さんへメッセージをお願いします。

サポートスタッフの皆さんへ

的地:本当に、言葉では言い表せないほど感謝しています。
皆さんがいなければ、ホームゲームの運営は成り立ちません。
正直、それを考えるとゾッとするくらいです。
皆さんは、過酷な仕事を一緒に乗り越える大切な仲間であり、クラブを一緒に支えるチームの一員です。
これからも、より良いホームゲームをつくるために、時には厳しいお願いをすることもあるかもしれません。
でも、ぜひ一緒に戦ってほしい。
スタジアムという「我が家」を、一緒に守り、育てていきましょう。


ファン・サポーターの皆さんへ

いつも熱い応援をありがとうございます。
ゴール裏で声を出してくれる方はもちろん、さまざまな形でクラブを愛してくれているすべての人が、私たちにとって大切な「サポーター」です。
皆さんがピッチに送ってくれる声やパワーは、選手たちにしっかりと届いています。
苦しい状況でも、もう一歩走る。
あと一歩、足を伸ばす。
その力を生み出しているのは、スタジアムから届く皆さんの声だと思います。
皆さんがクラブを誇りに思い、その魅力を周りの人に伝えてくれること。
そして、スタジアムで一緒に楽しみ、熱狂してくれること。
そのすべての力が、私たちがJリーグの舞台へ戻るための「光」になります。
最高のスタジアムを、一緒につくりましょう。

そして、一緒にJリーグへ戻りましょう。

 

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